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その姿を見た竜一と遼平は互いに顔を見合わせ、安心したように笑みを浮かべた。
「さてさて、俺らは帰るか」
「そうだね。あ、そうだ。竜一、帰ったら明日の数学の問題教えて」
「お前、授業寝てただろ」
「あ、バレた?」
同じタイミングで二人は大通りの方へ向かって歩き出した。その姿が視界に入り、夏姫は二人の後を追って走り出す。まだお礼を言っていない。多少荒々しい救出であったが、助けてもらったことには変わりはない。夏姫は二人のブレザーの裾を両手で掴んだ。
「あ、あの、助けてくださってありがとうございます……!」
「いいってことよ、これが仕事だかんな」
「いいってことよ、これが仕事だしね」
絶妙なタイミングで笑顔を浮かべた二人はそう言った後、気まずそうに苦笑を浮かべた。この二人の言うことが被るのはよくあることである。非常に仲が良いことが分かる。
――羨ましいな、俺にもこんな友達が居たらいいのに。
顔を見合わせて互いに照れ笑いをする彼らを見て、夏姫は胸の辺りがキュッと苦しくなった。父の転勤が多かったため、小学生の頃から転校の多かった夏姫にはそのような友達が居ない。
ようやく落ち着いたこの学園でそのような人と巡り会えればいいな、そう思い夏姫はぎこちない動きをする二人を見つめ、笑みを浮かべた。
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