第1章

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「おっと!」  何事かとH・Hは振り返った。 「ごめんよ兄さん!」  少年がそう言って走り去ろうとした。ボロボロのツナギを着ている。 「なんだ、ぶつかってきたの女の子じゃないじゃん。しかし、このパターンは!」  H・Hは素早く財布をチェック。ない。私の酒代を盗むとは太いガキだ。 「やっぱりスリか!」  言ってH・Hは少年を追いかける。 「待たんかクソガキ!」 「うわ! もう気付いた!」  少年は顔だけ、後ろに回す。そして走る。  曲がり角に少年は走る。 「スキだらけと思ったけど、案外鋭い!」  そして、さらに交差点を左に曲がる。  財布はなかなか重い。これは逃げ切らないと。 「クソガキ待て~! 女の子紹介しろ~!」 「くっ……」  足の速さには自信があったのに、なかなか追ってくる男を振り切れない。しかも、なんかわけわからないこと言ってる。  ニ岐の曲がり角があった。右に走る。  男の姿はない。 「ふぅ。逃げ切ったかな……」  少年は小走りになる。  男の気配はなかった。 「まいたか……」  少年は一息つき、安堵する。  そして、財布の中身を確認しようとした。
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