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「おっと!」
何事かとH・Hは振り返った。
「ごめんよ兄さん!」
少年がそう言って走り去ろうとした。ボロボロのツナギを着ている。
「なんだ、ぶつかってきたの女の子じゃないじゃん。しかし、このパターンは!」
H・Hは素早く財布をチェック。ない。私の酒代を盗むとは太いガキだ。
「やっぱりスリか!」
言ってH・Hは少年を追いかける。
「待たんかクソガキ!」
「うわ! もう気付いた!」
少年は顔だけ、後ろに回す。そして走る。
曲がり角に少年は走る。
「スキだらけと思ったけど、案外鋭い!」
そして、さらに交差点を左に曲がる。
財布はなかなか重い。これは逃げ切らないと。
「クソガキ待て~! 女の子紹介しろ~!」
「くっ……」
足の速さには自信があったのに、なかなか追ってくる男を振り切れない。しかも、なんかわけわからないこと言ってる。
ニ岐の曲がり角があった。右に走る。
男の姿はない。
「ふぅ。逃げ切ったかな……」
少年は小走りになる。
男の気配はなかった。
「まいたか……」
少年は一息つき、安堵する。
そして、財布の中身を確認しようとした。
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