第1章

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「ク~ソ~ガ~キ~」  気配もなく、背後から聞こえる声。 「出た~~!」  少年は走り出す。 「人を心霊現象みたいに言うな!」  H・Hは叫んで追いかける。 「おかしい! おかしい! あの人おかしい!」  少年は建物の角を右に曲がった。  追いかけてくる音はしない。 「チョロいもんだ。大人は体力ないからな」  安全な位置まで逃げ切ろう。  後ろを見た。男の姿はない。  しかし。 「見つけたぞ!」 「このガキだ!」  少年の前に立つ怖そうな男が二人現れる。 「ヤバっ!」  踵を返そうとするが、ガッシリと肩を掴まれる。  怖そうな男二人、以前に財布をスッたことがある男であった。 「逃がすか! 二度とスリしねぇように、叩きのめしてやる!」 「覚悟しやがれ!」  怖そうな男二人は興奮しているようであった。  何事かと、村人が集まるが、怖そうな男を止める者もいなかった。怖そうな男二人、村の中で知られたゴロツキである。止める勇気がないのだ。 「離せ! 離せよ! クソっ!」  少年はジタバタと暴れる。しかし、肩を掴む男は加減をしなかった。
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