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「……お仕事、落ち着いたんですか?」
深呼吸をして、気になっていたことを尋ねる。
約二週間。
同じ部屋に住んでいても、ほとんど顔を合わせることがなかった。
彼とは大学二年のときに付き合い出して、就職してから一緒に住み始めた。
僕は区役所勤めなのでさほど勤務時間に変動はないけれど、彼の場合は時期によって波がある。
「ああ。内装の仕事が一段落したから」
彼の経営するインテリアショップでは、内装のトータルコーディネートも行っている。
加えて、新生活が始まる時期なので、店舗の方もかなり忙しかったらしい。
「来月は、もう少し時間が取れると思う」
「そうですか」
安心して息を吐くと、彼が濡れた手で頬を撫でてきた。
「埋め合わせ、するから。したいこと考えといて」
基本が強引なくせに、優しくて律儀。
はい、と僕は目を細めて頷いた。
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