228人が本棚に入れています
本棚に追加
後は鳴海さんと二人で、空気のように大人しくしていよう。
これでよし、と小さく息を吐き出した、そのときだった。
「あれ、穂高も来てたんだ?」
僕の計画が、たった一秒で終わった。
「……黒川さん」
諦めと共に僕は腰を上げ、お疲れさまです、と挨拶をした。彼は今年度からうちの課に異動になったひとで、僕より二年先輩で。
残念ながら、僕はこのひとが苦手だった。
「お疲れ」
彼はそのまま、僕の右隣に腰を下ろした。
「お疲れさまです」
鳴海さんも、僕の陰から挨拶をする。
「お疲れさま。えっと……」
「税務会計課の、鳴海です。穂高君とは同期で」
「へえ、そうなんだ」
黒川さんは、彼女と僕とを交互に見て。
「二人は、付き合ってんの?」
唇を歪めて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!