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十時過ぎに、飲み会はひとまず終了した。
明日が休みなので店を変えて飲むひともいたようだが、僕と鳴海さんは、全体に挨拶をしてそのまま帰路に着くことにした。
僕と彼女の家は、同じ沿線にある。
彼女は僕と同じ路線の電車に乗り、一駅手前で降りる。
帰り道が一緒、というのも、彼女と親しくなった理由のひとつだった。
「疲れたね」
帰り道、駅へと向かう道の途中で彼女が呟く。
春の夜風が、ひんやりと気持ちよくて。
少し酔ったな、と思う。
「そうだね」
ただその場にいただけの自分が疲労を感じているのだから、会の最中ずっと周囲に気を回していた、彼女は。
「鳴海さんの方が、いろいろ大変だったでしょう。明日、ゆっくり休んで」
「うん。……ありがとう」
彼女は疲れを散らすように、ふわりと笑った。
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