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駅に着くと、僕等は同じ電車に乗り込んだ。春の夜の空気が、ドアにシャットアウトされる。
「ねえ、穂高君」
「ん?」
「黒川さんって、いつもああいう感じなのかな」
隣りに座る僕に、彼女は言った。
「少し、穂高君への当たりが強いような気がしたのだけれど」
彼女の表情が、曇る。気を遣わせたくなくて、僕は意識的に声のトーンを引き上げた。
「飲みの席だったからかな。職場ではそんなこともないよ」
「んー……、でもあれはパワハラっていうか……」
彼女が言いたいことは分かっていた。だから、その先を遮った。
「うん。でも仕事に支障ないし。苦手意識は確かにあるけど、単純にタイプが違うせいだし」
「穂高君が違うなら、わたしとも違うな」
彼女がくすっと笑ってくれたので、そうかも、と僕も笑った。
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