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「……いのり」 全身に来る、甘い低音。 彼だ、とすぐに気付いた。 同時に、額に落とされるキスに。 「……っ」 僕は慌てて目を見開く。 付き合って五年と少し。キスくらいで恥ずかしがる関係ではないのだけれど、不意打ちには弱い。 「えっと、……お帰りなさい」 「ただいま」 そろそろと身を起こして、僕は彼と向き合った。 「すみません。すぐごはんにしますね」 「いや、後でいい」 「?」 「いのりの無意識に、煽られた」 そう言って彼は、艶のある笑みを見せた。
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