228人が本棚に入れています
本棚に追加
背筋がぞくっとするのを感じて、一歩後ろに下がると。さっき、と彼は甘い声で言った。
「俺の名前呼んでたの、気付いてる?」
「え……?」
「こんなところで無防備に横になって、誘うように名前を口にして。襲われても、仕方ないと思わないか?」
「……っ」
戸惑う僕を見て。
綺麗にシニカルに、笑う。
少しずつ、出会った頃の彼の年齢に近付いていっているはずなのに。おそらく自分は、このひとのようには一生なれないんだろうなと思う。
「いのり、おいで」
声で、目で、相手を従わせる。
絶対的な僕の王。
その激しい熱に灼かれ、僕は意識を手放した。
最初のコメントを投稿しよう!