第十八話

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「雫瀬舞唄さん…彼女を殺しましたね。あなたの妹である旧姓・雫瀬鞘歌は生前の斉藤由里さんに対していじめをしていました。そのことで父親が逆上して鞘歌さんを殺害した。あなたは闇に身を置く情報屋だ。どこかは知りませんが、このことにたどり着いてもおかしくはない。そして腹いせに由里さんを強姦死体遺棄事件の犯人である、阪口雅耶(さかぐちまさや)と結託して殺害及び遺棄した。この事実に間違いはありませんか?」  私は彼女の方を一切見ないで、柊の報告書に視線を落としたまま、私が考えた結論を淡々と述べた。  斉藤由里さんの身辺を洗ってみると、ひと月も前から彼女と頻繁に接触していることが分かった。二人が親しくなったきっかけは、彼女が落とした携帯が由里さんと同機種であったことだ。もちろん以前に契約していた携帯を解約して、同機種に変更していたことも分かった。つまり出会いから仕組まれていたのだ。  彼女は由里さんの前を素通りする際路上に携帯を置いて、解約する直前に電話を鳴らした。彼女がそこで取りに行くからと、二人は落ち合ったのがきっかけだった。親しくったところをつけ込んで、彼女は阪口に殺させたのだ。  阪口は極度のロリータコンプレックスで、十代の頃にはすでに小学生をレイプするなど、セックスさえできれば誰でもいいような人間であった。一方の彼女は由里さんに殺意を抱き、お互いに利害一致していたのだ。  そして肝心となる二人の関係は、彼女が情報屋におちた時の悪友であった。その証拠を掴むために、留置所で阪口の所持品から、携帯の電話帳を確認した。するとさ行に彼女の番号が登録されていた。  ―やめて、お姉ちゃん助けて!!―  あれは由里さんの断末魔の叫びだ。どうしてそんなひどいことができるのか。どうして罪を犯す前に踏みとどまれなかったのだろう。 「確かに鞘歌は…あの子はいじめをしていたわ。罰せられるに値する人として最低なことよ。だけどそれが殺していい理由にはならないでしょう?」
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