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ーーーーーーーーーーーーー同日午前、本校舎
「芦原さん、今回の本校舎の煙騒ぎの件はこちらで上手く対応しておきますので、しばらくご自身の仕事に専念してください」
「ええ、そのつもりです。今回の件であちら側にあの存在を把握されつつあります。校長も身辺を警戒してください。」
事情聴取を一通り終えると本校舎から出て行く校長を見送り、エレベーターで本校舎の屋上へ向かう。
施錠が解除された扉を開け屋上に出ると、焼き焦げた床一面に、何かで物理的に抉られたような床の跡がすぐに目についた。
外部には隠蔽しているが、これがただの放火跡ではないことは一目瞭然だった。
抉られた床に近づくと、穴の最深部には少量の金属片が埋まっていた。
私は金属片を抜き取ると、それを即座に白衣の内ポケットに入れる。
「命中精度の高い攻撃だ」
「!」
背後からの声に即座に反応すると、屋上扉の死角から成人男性が出てきた。
「入沢か。あまり驚かせるなよ」
「すまないな。お前が調査しにくるまで外部の人間からここを守る必要があったのでな。」
「ああ助かったよ。この金属片を外部に回収されると困るからな。」
「その金属片は弾片か?やはり我々と同じく敵もあの存在に気づいたか?」
入沢の分析は正しい。表向きは煙騒ぎと扱われているが、この放火、攻撃は明らかに対象の消滅を目的とする局地的攻撃だ。
注目すべき点は抉られた床にある。抉られた床の真下には教室がある。
その教室にあの存在が紛れていると我々が予測し、本校舎を閉鎖した直後にこの攻撃があった。
「敵がここを狙ったということは、あの存在が本物である可能性が格段に高まってきたな。」
「入沢、そのことについてだが、あの存在と思われる対象とさっき接触できた。」
「!」
「接触ついでに仕掛けておいたよ。あの時限装置を。」
「こちらが一歩リードしたか。対象はどこに向かう手筈だ?」
「地獄に。」
「よりによって敵の懐にか!?何か算段があるんだろうな?」
「ああ。対象にやってもらうことにするよ。」
入沢の目がよりいっそう大きく開いた。
私の作戦は上出来だ。入沢が驚く以上に相手が驚くことになるだろう。
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