追跡者

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重い目蓋を持ち上げると、真っ黒な空が視界一面に広がった。 上体を起こすと手の平にコンクリートの地面のザラザラとした感触がした。 信じられないが、俺はコンクリートの上で寝ていたようだった。 俺はバイト先の駐輪場に自転車を置きに行こうとしてたはず。 しかし自分の手には自転車のハンドルも学校用の鞄も握られていない。 (寝ていた事を考えると、自転車を置くときに気を失った?) 何があったのか思い出そうとするが、今朝の様にはいかない。 そもそも、今何時なんだ。 服のポケットからスマホを取り出そうとするが、手にはスマホの感触が無い。 (まさか、スマホも無くなったのか?) これじゃ誰かに連絡する事すらできない。 (店長、怒ってるだろなあ。) 神馬町店は首都圏の駅前なので繁盛していてかなり忙しい。 そんな中誰か一人休むと、代わりを呼んでもその間大変な事になる。 (いや、今はそんな事より神馬町の交差点に戻ろう) ここが神馬町付近なら、スクランブル交差点付近のビルの明かりが見えるはずだ。 俺は立ち上がると、360度空を見渡しながらビルの明かりを探し歩き始める。 夜空にはビルのシルエットも飛行機のライトすらも無い。 ここは神馬町じゃないのか? 見上げた顔を元に戻すと、周りに閑静な住宅が並びたっているのがわかる。 しかしどの家も灯りひとつなく、不気味なほどに静かだ。
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