プロローグ

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話しかけてきたのは山下 晃。 晃とは中学からの付き合いで、中学では同じサッカー部だった。 高校に入った今では俺は部活をやっていないが、晃はサッカーを続けている。 「大体、西校舎で授業やるなんて聞いてないぞ。本校舎に入ったら中にいた先生にめっちゃキレられて、HRに間に合わなかったんだよ。」 俺は文句を垂れつつ学校に着いたときのことを頭に思い浮かべる。 家から自転車を全速力で走らせた俺は、無事遅刻せずに学校の正門を抜け、すぐ左手にある駐輪場に自転車を止め、本校舎に入った。 入ってすぐ、解放的な広さの廊下に、短い灰色の髪と茶色のスーツが印象的なこの学校の校長と、その横に立つ白衣を着た男、そしてその二人の前に数人の警察官と消防士が立っていた。 校長たちが何を喋っているのかはわからなかったけど、警察官と消防士は真剣な表情で校長の話を聞いていて、廊下には緊張が走っていた。 そんな中、白衣の男が俺の存在に気づくと、眉間の皺を寄せ、怒りの形相で俺の目の前まで迫ってきて、開口一番西校舎で授業をするからと俺を外へと追い出した。 そのときの一刻も早く本校舎から生徒を追い出そうとする白衣の男の必死さがとても印象的で、今も頭に強く残っている。 何か、この学校で事件でも起きたんだろうか? 「お前、本校舎入ったのか?」 晃が驚いた表情をして聞いてくる。 「入ったけど。本校舎でなんかあった?」 「最近、本校舎の周辺に煙が立ち込めてるって通報があったらしいんだよ。なんでも、毎日夜になると校舎から大量の煙が出てくるって」 「へえー」 知らなかった。 だから本校舎はあんな騒ぎになっていたのか。 見た感じ廊下には焼け跡らしきものなんて無かったけど、夜っていうことは、誰かが夜火遊びでもしてたんだろ。 俺はその事に関心を持たなかった。
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