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高橋と俺は西校舎三階の教室から出た後、教室の右手にある階段で一階まで降り、そのまま中庭に出た。
放課後という事もあり、中庭には、木のテーブルや椅子に腰掛けた女子生徒が友達同士で会話していたり、部活の集合場所として、色々な部活の部員たちがそれぞれの顧問の前で真面目に話を聞いている姿が見られる。
高橋は中庭の端の木の下まで行き足を止める。
俺はバイトに遅刻したくないから内心焦っていたが、高橋の横に立ち、話を聞くことにした。
「話って何なんですか?」
「木崎、今日の朝本校舎に入ったらしいな」
「ほ、本校舎ですか?」
その返事は予想外だった。
高橋がわざわざ場所を選らんでまで俺にする話なんて、俺が夏休みの間自宅に帰らなかった事についての指導くらいだと思っていた。
高橋の指導を断れる立場でもないから、バイトに遅刻しそうだろうが仕方なく着いてきた。
「あそこは今、夏休みの間に起きた煙騒ぎで警察が立ち入り調査している。一応クラスの全生徒の家に、最初の数週間は西校舎で授業をやる、と伝えておいたんだが、両親から聞いてなかったのか?」
「え、はい。両親からそんな事は聞いてません。」
咄嗟に自分の口から出る最低な嘘。
家に帰りすらしなかったなんて言えない。
バイトにギリギリ間に合うためにも、これ以上説教を喰らうわけにはいかなかった。
「…まあ事情はわかった。」
高橋は眉間の皺を寄せ、俺に目線を合わせる。高橋は俺を睨み付ける。
「…本校舎で " "を見たか?」
「え?」
高橋は、隣にいる俺の耳にやっと聞こえるかくらいの小さい声で確かにそう聞いてきた。
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