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「あ、あの、あの……。わ、私は」
隠蔽工作が剥がれ慌てふためく少女をよそに、男は冷静に考える。
最後、あれと戦ったのは軽く五十年は昔。一緒に酒を飲んだのも精々三十年は前。何より、あれは約束を破るような奴では無い事は、嫌と言う程に知っている。しかし、それならどうしてここに魔族が来たのか? あれ含め四、五人にしか教えていない筈なのに。
情報が何も無い現状、全く解らない。男が短時間ながら、熟考した末に出した結論。更に思考を深めようとしたが、それは少女によって防がれてしまった。
「話を聞いて下さい!」
「……すまんな。考え事をしていた」
「そ、そうですか。今回は許してあげます。ではなくて、えっと…………一度しか言いませんから、心して聞いて下さい」
暫く視線を泳がせて悩むような素振りを見せていたが、意を決したように再度視線を男へと合わせる。
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