いち

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 甚く取り乱した彼女は、誤魔化す事なく返してしまう。だが今はその純真さが幸いして、少女の話の信憑性がぐっと上がる結果となった。 「そうか、元気なのか。なら良かった」 「はい。寧ろ昔よりもかなり行動的です。けどそれより、あの、私の質問にも答えて下さい……」  答えを聞くと、彼は瞑目して微笑む。彼女はその微笑みから懐かしむような雰囲気を感じとり、それと同時に今更ながら警戒心を持たない自身に疑問が浮かび、困惑する。  自分は魔で、この男は人。相容れぬ存在である筈なのに、どうしてか敵視できない。その上、男にもその意志が見えない今この状況が、少女が聞かされていた話と大きく食い違っているために。
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