隠栖勇者と少女魔王

いち

　勇者。それは、某かに特殊な力を与えられた者を指す。個々人によって獲得する能力が異なるその力は、魔に対して絶大な効果を発揮する。魔を統べる者たる魔王さえも滅ぼしうる程に。

　とは言え、ポンポンと魔王を滅する事が出来る程に力を高められる勇者は現れない訳で。その為、勇者と言うモノは数や回数で補われている傾向があった。冒険譚もへったくれもない。

　話を戻すと、魔王と比肩出来るのは激戦を生き延びた一握りの勇者だけなのだ。だと言うのに、彼はそれを平然と口にした訳で、聞かされた方が天敵の代名詞、魔王では取り乱しても仕方が無い話である。

　だが、男が他の存在と話すのも久しいばかりに、仮にも魔王相手にそこを考慮に入れなかったのは、果たして勇者としてそれはどうなのか。その内心は当人達のみぞ知る話。