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「よし、これで完成か」
「これはこれは、美味しそうですね」
「早いな、おい」
「勘ですよ、勘。後は匂いと雰囲気です」
「凄い勘だな……」
男が手早く料理を作り上げると、少女は非常に素早い動きで部屋を移ってきた。あまりの早さに男は驚いたが、持ち前の胆力で表情までは変わらなかった。
「それじゃ、いただきます」
「いただきます……って何です? 新手の魔法か何かですか?」
「なにそれこわい。……そうじゃなくてな、食前の挨拶だ。確か、自身の糧になる食材に感謝の気持ちを込めて、だったか」
「なるほど。人の文化にはそんな物があるんですね。では、私も……いただきます」
男に倣って手を合わせた少女は素直に感心しているようであったが、それを見た男は、何とも言い難い気持ちに囚われた。魔族を殺しているのも、同じ人なんだけどな、と。
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