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両手で鍬を振り上げる。そして、若干弧を描いて振り下ろし、手前に引く。こうすると、刃先がいい具合に土を耕せるのだ。
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背が高く、鬱蒼とした木々の囲う開けた平地。そこに、一連の動作を繰り返す男が一人。一人で耕すには余りに広いその平地を、ただ無心に耕し続けている。
山の端から陽が顔を出した辺りから続けていたその作業は、陽が中天に昇ってる事に男が気付くまで続いた。
農作業に身をやつしていた男の身形は農夫と言うにはとても身綺麗な上、体格も同様に程遠い物であったが、ひ弱さ等は感じられなかった。
男は空を見上げた状態で額の汗を腕で拭うと、木々との境目に置かれていた巨大な鹿のような獣を鍬と共に担ぎ、その場を後にした。
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