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『良かった。まだ息がある。』
何とか死なせずに済みそうです。
私は、指に血液を集め、彼の口に流し込みます。
吸血鬼の爪と指の間には血道と呼ばれる血液を流す器官を持っているんです。
私は、自分の血にこの男の人の身体を治すように命令します。
『ゴクッゴクッ』
飲んでくれてるようです。良かった。
吸血鬼は血液操作の能力を持っていますが、その能力は自身に限定されます。
他人の血液を操作するには、血液を送り込む必要があるんです。
ですが、体内に直接、吸血鬼の血液を送り込んでしまうとその人間は抗うことが出来ないほどの猛毒で、吸血鬼の意のまま操られてしまうのです。
吸血鬼はこれを隸人化と呼んでいます。
禁忌とされていて、それを行ったものは、死より恐ろしい制裁が待っていると言われています。
口から血液を流すことで、猛毒性を極力排除できるのです。
もっとも、後遺症が無いわけではないのですが…。
『んーー』
どうやら、治癒は効いたようです。
『良かった。』
つい抱きしめてしまいました。
『うわーー』
彼が飛び退き距離を取りました。良かった。元気そうです。
『君はいったい!?』
この後に続く言葉は何だったのでしょうか。何なんだ…なんというか、失礼です。何者なんだ…うん、これかもしれません。
『私は、エレナ・ハミルトン。あなたを吸血鬼にした者です。』
そうこれが、後遺症と言いますか。吸血鬼の血液を口から飲んだ結果です。
『は!?何いってるんだ。』
信じて貰えませんでした。仕方ありません。彼に鏡を見てもらいましょう。
『何これ??あぁ、手鏡ね。』
私から受け取った鏡を覗き込んでいます。表情が段々険しくなっているように見えます。
『ドウナッテルンダ!!』
片言の様に聞こえたのは気のせいでしょうか。彼の目は緋眼になり、犬歯が少し伸びているのです。それは驚きますよね。
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