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【聖先生×ランラン+ヴラド】
●間違ってはいない話●
「ヴラド先生!」
振り返り見てみると、大きな声でこちらを呼びながら走って来る小柄な人物。
「杜先生どうしました?」
「いえ、大したことじゃないんですけど…これ、物産展でお菓子買ったからご一緒にどうかなぁ~と思いまして…」
そう言って、土産物として有名な菓子を見せながら伺うように見上げてくる。
全く…この人ときたら何の得にもならないのに人前で全然食べないこちらを心配して度々こういう事を言ってくるのだ。
「お気遣いは有り難いのですが、僕は結構ですよ」
「あ~…今日も駄目だったかぁ~…」
心底残念そうに言うのだから何ともこそばゆい気持ちになる。
「じゃあ、今度搾りたてトマトジュース作ってあげます」
ニカッと嬉しそうな笑顔でそんなことまで言ってくるなんて。
思わず普段常に貼り付けている軽薄な笑みが薄れてしまうも、じぃっと観察したがその顔のどこにも見返りを求めるような打算的なものを見付けることは出来ないようだ。
(全く…)
「あれ?俺何か変なこと言いました?」
「いいえ。楽しみにしてます」
「はい!朝市行ってきますよ!」
(困ったものですねぇ)
隙だらけですよ貴方。
こういう純粋な好意には慣れていない。
(困ったものですねぇ…)
それを心地好く感じる自分が。
「たく、あの人どこ行ったんだ?
あ、奥寺先生見つけたら先に食べてるって伝えてもらってもいいですか?」
「構いませんよ。では」
こうして杜先生と別れて図書室に戻る途中、中庭横の廊下を歩いているとその人物が花壇横にしゃがんで何かをしているのが見えた。
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