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扉の開く音がしたあと、靴の音が何度も聞こえ、しだいに音が大きくなっていった、つまりは私の近くに誰かが来たのだ、布団に被っていても存在感が私の傍にあるのがわかる。
「もう一週間か
あれは、一度おきたのか、それとも誰かが外したのか」
呟くような声が聞こえた瞬間、私はギュッと閉じていた目を開いた。そして、ゆっくりと被っていた布団から恐る恐る顔を出してみた。
「つか、さ?」
「そう、だけど
兄貴、で間違いないのか・・・?」
私の声に少しだけ驚きながら、司は私の顔を見つめ、私の問いに答え、今度は私の方へと問いを投げかけて来た、それは私が一番知りたい、と思ってしまうのだけれど、司からしてみれば、全く知らない容姿の女が、自分の兄である凪沙の部屋で寝ていたのだから当然か。
「うん、これが夢でなければ
そうみたい」
「そう、か
初めて見たのが今だったら
激怒しながら、兄貴は何処だ、と詰め寄ったよ」
司の話によると、朝になり、私を起こそうと声をかけても一切の反応が無いので、徹夜でDF21をやっているのかと思い、部屋へと入ると、その段階では、まだ面影が残っていた、私が横になっていたのだそうだ。
その時点でかなり驚愕したんだそうだが、考えなしに大騒ぎして、何事もなかったら迷惑になると、一旦様子をみることにしたようだ。
しばらく時間がたち、様子を見に来た司は、更に驚いた、ゲームをするためにほぼ全裸状態だった兄の体の形が劇的ではないが徐々に変化していっていることに気が付いたから。
仕事に行っている両親に連絡しようとしたものの、忙しいからか夜になるまで返事は来なかった、状況を伝えようにもあんまりにも非現実的なため、冗談を言っていると取られたりしたようだ。
ようやく親が帰ってきたときには、私の体は、もう、男のものとはかけ離れたモノになっており、急いで救急車を呼び、私はこの病院へと運び込まれた、と伝えられた
「ごめん、つかさ
随分と迷惑をかけちゃったね」
「それはいい
一番不安なのは兄貴なんだろうしさ」
司の言葉に、私が今まで押し殺していた気持ちが開放され、思わずポロポロと涙をこぼしてしまった、何度もありがとう、と司に言いながら。
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