二人は踏んだり蹴ったり

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 地獄絵図というのは流石に言い過ぎだと思う。  けど、この状況をそれ以外で表現する語彙力をあいにく持ち合わせていなかった。  俺と水澤は屋上で約束を結んで、アンテナ部の打ち上げ会場に来たわけだが……。  会場の扉を開けた先には想像するものと違ったある意味恐ろしい光景が広がっていた。 「ハッハッハッハッハッハ!! 神田ブラックは意外とノリがいいなぁ!!」 「私はいつもノリノリなんですよ! ねぇ鈴? ……ねーえ、すーず! 聞いてる? ……あれ? 鈴なんだか太った? 食べ過ぎ? こんなに横に大きくなっちゃって」 「りん! それテーブルだから! 確かにテーブルクロスは白いけど、私と判断する基準は色だけじゃないでしょ!」  詩奈先生と凛がテンション上げ上げで掲げるグラスには不吉な紫色の液体が……。  鈴は額に『私は妹』と書いた張り紙を付けたまま、暴走する凛を止めようとわたわたしている。  会場の端では、 「遥斗……みて……」 「こ、琴乃!? 女の子がそんなはしたないことやめるんだ! 俺がっ! 俺が責任をもって頑張るから!」  遥斗と三国はお互い見つめ合いながら……皿回しを見せ合っていた。 「なんだこれ……」  俺たちがいない間にここで何が起きたんだ……。 「先輩……。これ、どうなって……」 「分からない……ただ……異常事態ってのはよく分かった」  とりあえず、このカオスな状況を飲み込むためにもまともそうな鈴に話を聞いてみようか。
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