0人が本棚に入れています
本棚に追加
伝説のキャスト ~大粒の涙~
大粒の涙が、水面に落ち消えていくのをじっと見つめながら彼は大きなため息をついた。
先ほどまで人だかりでにぎやかだった港の周りも、今は小走りに行き交うわずかな人の姿しかない。
「終わったな」
ポツリと独り言を言って、目の前の夜景を眺めている。
「子供の頃、親に連れられ始めてTDSに来て、ハンガーステージでミスティックリズムを見終わった後、転んで怪我をしたんだっけ。
ミクさんにPFAにエスコートされて手当てをしてもらいディズニーのキャストに憧れたんだよな~
成人してディズニーに入社して、ハンガー配属になって、ミクさんのトレーニングを受けデビューしてから1年か・・・・
自分の希望でメットに異動して半年。
そしてきょうで終わり・・・なんだよな」
最後の仕事、ブラビのゲスコンを終えて彼はメディテレーニアン・ハーバーの畔で、水面に映る自分に話しかける。
「本当に楽しかったな~、家の事情とはいえ、
やっぱりなごり惜しいな・・・・」
泣き虫の彼の目からはまた大粒の涙が続けて3粒こぼれ落ち、水面に溶けていった。
「おにいちゃん、さっきはありがとう!」
振り返ると、小さな男の子が彼を見上げて笑っている。
「ああっ!さっきブラヴィッシーモを見ていた坊やだね」
「うんっ!おにいちゃんのおはなしたのしかったよ!こんどきたときもおにいちゃんのところでみるから、またたのしいおはなししてね!」
「う・・・うん・・・」
彼は、答えに困って言葉に詰まってしまった。
「ぼくね~、おおきくなったらディズニーのおにいさんになるんだ、そのときおしごとおしえてね!じゃあね、バイバイ!!」
と言って、その子は走り去った。
「これなんだ、この瞬間がたまらなく幸せを感じるときなんだ。
けど・・・」
「ウノ・シンタロウさん!」
突然、見たことのないコスチュームの外国人キャストか声をかけた。
「あなたは誰ですか?」
「WDFRのケビンと言います。」
????????
ケビンはシンタロウに話す。
「ウノさん、あの子の人生最後のハピネスを提供した人はあなたですね。」
「何のことですか?」
シンタロウは戸惑いながら聞く。
「あの子は、あと6ヶ月の命なんです。
ご両親が最後の思い出にと、きょうTDSにつれて来られたのです。」
????????
最初のコメントを投稿しよう!