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敦士さんに言われたあれから、どうも咲弥さんのことが気になり始めた。
勿論お兄ちゃんの概念は消えないけど、僕を凄く優しくしてくれる。
僕が読めそうな本を選んでくれたり、一緒に絵本を読んだり…自分の勉強に支障がないか聞いたことがあったけど、大丈夫だよと笑ってくれる。
一緒にいて落ち着く、敦士さんともだけど。
これが敦士さんの言う恋愛感情なら、僕は咲弥さんと敦士さん両方好きだと思う。
でも同室の人達も好きだし、もっとここに慣れればもっと大事な人になる人がたくさんいると思う。
だから敢えて自分の気持ちは言わないでおく。
第一敦士さんには華さんがいるし。お兄ちゃん取られたみたいで少し寂しいけど…。
咲弥さんは僕のこと好きなのかな?
だからあんな質問を敦士さんはしたのかな?
でもよくわからないから、誰かに愛されたことないから…その辺がわからない。
でも一度意識してしまうと、それはまとわりつく。
咲弥さんが居なくなるのは嫌だ、絶対悲しい、でも薬を止めると言ってたと敦士さんに聞いた。
だからもうそんな怖いことしないでくれて嬉しい。
「やっぱりよくわかんないや」
もう、考え過ぎて自分が何を思ってるのかわからなくなった。
結論は多分恋愛感情じゃないだけ。
「おー、何か考えてんのか?無知」
信也さんが言う。
「咲弥さんのことです」
「咲弥?もしかして図書館の?」
「はい、そうです」
「それで何を考えてたん?」
「うーん、これは言っちゃいけないかもしれないので、秘密です」
なんとなくだけど。今の心境を話したくなかった。
「秘密とか気になるなぁ、ちょっとでもいいから教えてよ、なぁ」
聞きたいのかもしれないけど、信也さんは男同士は気持ち悪いって前に言ってたし、それで引かれるのも嫌だった。
「また今度、でいいですか?」
「んー、まぁいいよ、でも気になるなぁ、無知って皆の斜め上を行く考え方してるからなぁ」
「どういうことですか?」
「天然ってことだよ」
ニヤニヤ笑いながら信也さんはTVをゲーム画面に切り替えた。
今度は負けねぇ!と画面に吠えていた。
やっぱり信也さんに言わなくてよかったかも…。プライバシーもあったもんじゃない。
後で雫さんに相談してみよう、雫さんなら何だか信用できる、話を聞いてくれるだろう。
僕はベッドに仰向けに寝そべった。
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