課題

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 瑞希は自分が人型狐の姿になってしまった精神的ショックにより、その場で気絶してしまった。  険しい面持ちでこの場から移動を促したのは、瑞希の姿をしたレナ。向かったの瑞希の家だった。  部屋のドアに『人避けの術』を掛けて、瑞希の家族が入って来ないように施し、瑞希をベッドに寝かせると、優子はレナと状況確認を始めた。  瑞希が知るはずもない戦巫女としての優子に関する情報が、その口から出る度、改めて魂が入れ換わったことを確認した。  その後、ベッドで横たわるレナの姿をした瑞希が虚ろな目でこちらを見つめていた。  もうろうな意識の瑞希に、優子は少しずつ状況説明を始める。  この世には、物や伝承から生まれる妖怪、神の使いとして人の前に現れる神使(シンシ)、そして、神が居り、その三種を総称して『神様』と優子達巫女は呼んでいる。  その中でも夜な夜な悪戯しに人の世へ現れる神様達を『悪神』と呼び、悪神に神様の國へ還って頂くことを仕事としている戦闘に特化した巫女を『戦巫女』と呼ぶ。  そして、優子は高校入学と同時に、その戦巫女になり、今日まで相棒の神使と共に夜の町を悪神から守っていることを説明した。  そこまで話し終えて、ため息をこぼした。瑞希本人は頭がもうろうとしている。多分、今まで話したことも夢の中の出来事だと思っているのだろう。  しかし、言い出しづらいからといって先送りにするべきではないことなのだろう。優子が本題に入ろうと話を続ける直前、瑞希から素朴な疑問を投げ掛けられた。  何故、目の前に自分の姿をした人物がいるのか。  まさか、瑞希から本題を切り出されるとは思わず、優子は固まってしまった。 瑞希は勝手に、優子の相棒が人間に化けているんだと確信した。優子は申し訳なさそうにそれを否定し、手鏡を瑞希に渡した。  優子は戦巫女として優秀な成績を残している。なので、おそらくそれに嫉妬した同業者の悪戯で、魂を入れ換えられたのではないかと説明した。  説明を終え、レナに瑞希を見るよう促されると瑞希は手鏡を握ったまま、再度気絶していた。  瑞希が目が覚まし、夢ではないことを説明すると、今後の方針を話した。  元に戻る方法が見つかるまでの間、レナの能力である『透明化』を使いながら、瑞希の姿をしたレナの隣で通常通りの生活をして、周囲に怪しまれない様に行動してもらうことを頼んだ。
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