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豪勢なカザンの部屋は静まり返った。ソウヤの声が鎮魂曲のように流れる。
「わたしの夢はいつか西雁鉱にいき、逆島派の進駐官の遺骨を見つけ、日乃元(ひのもと)に持ち返ることです」
ジョージがそっという。
「佐竹(さたけ)さんはなぜ、暁島会(ぎょうとうかい)に入らなかったんですか」
ソウヤは痛々しく笑った。
「逆島派も立派だけれど、東園寺派も決して悪くはありません。うちの大将には、その後たくさん面倒を見てもらっています。わが家は貧乏人の子沢山(こだくさん)で、妹弟の3人が進駐官になり、東園寺家のお世話になっています。ただし……」
ソウヤがじっとタツオを見つめてきた。転入生紹介のときと同じあたたかな視線だ。あの目にはこんな意味あいがこめられていたのか。タツオも胸が熱くなった。
「次に西雁鉱のようなことが起こったら、わたしは逆島派のために、この命を捨てようと思っています。タツオさん、そのことを忘れずにいてください。あなたなら、きっと逆島家を再興できる。陰ながらお力添えします」
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