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カザンが叫んだ。
「おい、佐竹、待て。おまえは誰の部下だ?」
ソウヤはゆっくりとカザンに振りむいた。確信をこめていう。
「坊ちゃんの部下です。お命を守るよう、お父上から厳命を受けています。五東(ごとう)連合からは距離を置けともいわれていますが」
カザンは憎しみの目でタツオをにらんだ。
「だったら、おれがタツオを殺せと命じたら、やれるな?」
ソウヤの目が半分閉じられた。感情が読めなくなる。養成高校の生徒から、急に鍛え抜かれた進駐官に戻ったようだ。
「坊ちゃんの生命に危険が迫っていると判断すれば、わたしはご命令に従います」
「わかった。それなら、許す」
カザンは尊大だった。十代なかばにして人に命令を下し、人がそれに従うことに慣れた人間なのだ。タツオは近衛(このえ)四家の生まれだが、それができない性格だった。カザンが黒革のソファでいった。
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