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「なんだか、おまえを糾弾(きゅうだん)する気が失せた。佐竹がつまらない思い出話をしたからな。おまえたちはもう帰ってくれ」
あごの先を振り、タツオとジョージに部屋を出ていくようにうながした。なんとかこの場を切り抜けた。タツオは静かに帰ろうとした。ドアノブに手をかけたところで、背中にカザンの声が石つぶてのように飛んできた。
「おれは子どもの頃、おまえと組めば、とんでもなくでかいことができると思っていた。近衛四家の席次の1位と2位を、東園寺家と逆島家で占められる。両家が中心になり皇室を盛り立て、世界中に植民地を広げていける。おまえの頭脳とおれの決断力があれば、そいつはむずかしくはないと思っていたんだ。おまえがどうかは知らないが、おれはおまえのことを親友だと思っていた」
カザンの声が濡れたように聞こえる。驚いたタツオはドアに手をかけたまま振り返った。
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