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「だが、今夜で子どもの感傷はすべて終わりだ。おれは東園寺家を代表して、おまえの敵になる。現在の近衛四家と進駐軍の体制をひっくり返すような動きは、すべて反体制運動だ。今の佐竹の話を聞けばわかる。逆島家再興ほど危険な思想は、進駐軍のなかにはほかにない。おれは徹底的にそんな運動は弾圧するぞ」  タツオは返事ができなかった。自分は再興など望んではいない。文化進駐官として、エウロペやアメリアで旧世紀の遺跡や文化を研究して暮らせれば、それでいいのだ。戦いは嫌いだ。だが、そのまま口にはできなかった。自分の言葉は、きっと逆島派の生き残りに伝わることだろう。もう自分だけではないのだ。逆島家に夢をかける人たちの象徴に祀(まつ)り上げられてしまった。 「わかった。でも、ぼくはカザンを友達だと思っている。今でも」
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