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「敗北後の撤退戦は非常に厳しいものです。敵は戦勝の勢いに乗り、血に飢え、攻め立ててくる。こちらには武器も弾薬も兵力も足(た)りない。志気は最低だった。誰もが負傷兵を抱えているのです。西雁鉱(さいがんこう)に最後に残ったのは、ほとんどが逆島(さかしま)派の進駐官でした」
2500人の先遣隊のうち99パーセント以上が戦死した激戦地で、そんなことがあったのか。カザンが冷たくいい放(はな)った。
「落ちぶれた名家をいつまでも支持していれば、尻拭(しりぬぐ)いをまかされるのは当然だ。どうせ萬(よろず)家の臆病者(おくびょうもの)たちが、自らの命惜しさに命令したのだろう」
ソウヤはじっと東園寺(とうえんじ)家のひとり息子を見つめた。タツオは不思議だった。憐(あわ)れむような視線にはどんな意味があるのだろう。
「あなたが次期当主でなければ、立ちあがれないほど殴(なぐ)りつけていますよ、坊ちゃん」
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