Act 1 黒鳥の湖

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お兄さんの紙芝居は、そんな私にピッタリの内容だった。 お兄さんの話の主人公は全て悪人で、悪どいことを沢山やっていくが、その行為の裏側にある感情や背景に着目していた。 姉弟を狙う魔女の心のうちにある王に愛されぬ孤独、カリフの圧政で生きるために何でもするしかなかった盗賊達の悲惨な日常-- お兄さんの紙芝居は幼子にはなかなか分からりづらい世の中の影を巧みに描き出す。 紙芝居の内容が内容なだけに始めは10人くらいで聞いていた紙芝居も気づけば、私一人になっていた。 それでもお兄さんは私に会うと、悲しそうな素振りも見せず、いつも通り楽しげに紙芝居を始める。 私はそんなお兄さんが大好きだった-- お兄さんと一緒にいられる時間は楽しくて、この時間に終わりが来ることなど思いもしなかった--
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