251人が本棚に入れています
本棚に追加
そこまで話すと、お兄さんは表紙の絵を前面に出し、紙芝居を片付け始めた。
私は目をぱちくりして、お兄さんに尋ねる。
「ねぇ、もう終わり?
いつもはおしまいまでお話しするでしょう?
どうしてもうやめちゃうの?」
お兄さんは口角を上げ、笑ってみせた。
でもその笑顔は悲しげで、青い瞳は少し潤んでいた。
彼は深く息を吐き、出来るだけ普通の声色で語りだす。
「......ごめんね。
この続きは未だ描いてないんだ。
多分......これから先もずっと描けない。
このお話の続きは里穂(りほ)ちゃんが考えて。
今日の紙芝居あげるから--
そしていつか会える日が来たら、お兄さんに続き聞かせて」
「そんなの嫌だよ!ずっとお話聞かせてよ!!」
地団駄踏んで泣きわめく私の頭をお兄さんは撫でる。
お兄さんの手が髪に触れ、驚いた私は思わず泣くのをやめ、お兄さんを見た。
お兄さんは目を細め、優しく笑う。
「大丈夫。また会える。
それにどんな悪人でも、死んじゃう時には泣ける里穂ちゃんなら、皆が幸せになれる終わりを頑張って考えられるはずだよ......
じゃあ、またね」
お兄さんは紙芝居を抱え、立ち尽くす私を一人残し、自転車を走らせる。
その後、私がお兄さんと会うことはなかった。
お兄さんの名前も知らない私は、捜すあてもなく、17歳になるまでの日々を過ごした。
私はお兄さんからもらった紙芝居の終わりをやっと描き終えた。
......だから私は知りたい
お兄さん、貴方の物語の続きを--
もし再び運命を手繰り寄せられるのなら、
私は貴方に会いたい--
最初のコメントを投稿しよう!