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夏の日差しがグラウンドを容赦なく照らし、それに呼応するように応援団の大声援が聞こえる。
夏の甲子園をかけた地方大会の決勝戦。
9回表二死二、三塁。
リードは僅かに一点で、次の相手の打者は四番。
俺はタイムをとってマウンドに向かった。
周りの仲間もそれを見てマウンドに集まり、ベンチからは伝令の選手も走ってきた。
「さて、見ての通りの状況なんだけど、どうしようか」
マウンドに皆が集まった後、俺が少し苦笑いを浮かべながら問いかけると皆からあきれたような表情をされた。
「ここまできてお前の決めたやり方に反論する奴なんかいねぇよ。やりたいようにやれよ」
ファーストの磯川が左手で俺の背中を叩く。
「後悔しないように、自分に嘘はつくんじゃねぇぞ」
セカンドの塚本が泥だらけの顔に笑みを浮かべながら言った。
「お前らで打たれたらしょうがない。あとは任せたぞ」
サードの梶本が俺の胸をグラブで叩いた。
「監督からの指示も同じだ。お前らでどうするか決めていい。だから思いっきりやってこいって」
伝令に走ってきた北山もベンチに振り返りながら言った。
ベンチでは監督がこちらに視線を向けていた。心なしか口もとが笑っているように見える。
「他人に意見を聞くなんてお前らしくない。いつもみたいにスパッと決めろ」
ショートの中西が吐き捨てるように言った。
「俺はお前のリードに従うのみだ」
ピッチャーの淳は俺を真っすぐに見据えた。
「……勝負するから後ろは任せたぞ」
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