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「打たせるならせめて俺たちが捕れる場所に飛ばしてくれよな」
梶本がそう声をかけると、俺と淳以外はそれぞれのポジションに散らばっていった。
「中西の言うとおり周りの意見聞くなんてお前らしくない。暑さにでもやられたか?」
淳が少しあきれたように言ってきた。
「おそらくこの3年間で一番大事な場面だからな。一応聞いてやったんだよ、一応」
俺がそう吐き捨てると、淳は笑顔になって
「それなら大丈夫そうだな。早く戻れ。審判に怒られるぞ」
と言って俺をマウンドから追いだした。
相手のバッターが右打席に向かってくる。
「作戦会議はもういいのか?」
そいつは俺を見ながらそう言ってきた。
若干ニヤけた表情が奴の余裕を感じさせ、おもしろくない
「お前に対して作戦なんか必要ない」
俺があっさりとそう返すと、奴は顔から笑みを消し打席に立った。
淳に向かってサインを出す。
初球の入りは最初から決めている。
淳はすんなりとサインに対し首を縦に振るとそのままセットポジションに入った。
俺は立つこともミットを大きく外に構えることはせず、ミットを内角に構える。
淳が間を長めにとった後、左足をあげて投球モーションに入り、構えられたミットに向かってボールを放った。
放たれたボールはホームベースを通り越してミットに収まることはなく、鋭い金属音を残して高々と舞い上がった。
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