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「普通あそこは外にひとつ外すとか変化球から入るとか、慎重に入るところだろ。いきなり内角に直球とか安易すぎるんだよ」 石崎はさらに口調を荒げる。 だから俺は少し反論する事にした。 「俺の構えたところに投げきれてればあんな打たれ方はしなかったんだよ。どっちかっていうとボールゾーンの厳しいところに構えたし」 「いきなりそんなの要求されたって上手く投げられるかよ」 「メンタルが弱すぎる。お前ピッチャーに向いてないんじゃないのか」 「うるせぇよ。普通の試合ならまだしも今日は上級生相手に投げてたんだぞ。内角を厳しく突いて、相手に当ててケガとかさせたらどうすんだよ」 「死球を恐れて内角投げられないとか論外だ。だいたいお前の球だったら当たってもケガなんかしねぇよ」 「…なんだとぉ」 いよいよ石崎が怒って俺に飛びかかろうとした時に、遠巻きに見ていた部員の中の1人である中西が俺たちに近づいてきた。 「野川、そのくらいにしとけ。お前は求めてる方向が周りと変にズレてるんだから言い合いするだけ無駄だ」 「ときにはキャッチャーにも奇抜さは必要なんだよ」 「お前の場合は度が過ぎてる。相手の裏をかくことを意識しすぎ」 「……」 中西がはいってくるとこの言い争いはめんどくさくなる予感がしてきたので、俺は早めに帰り仕度を済ませ、自転車置き場に止めていた自転車にまたがって学校を出た。
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