プロローグ~選挙事前運動~

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 仮にいたとしても、人見知りで親しくない人と話そうとすると、ワケもなく顔が耳まで真っ赤かになってしまい、上手く声が喉から出て来ないあたしは 「すみません。そこにあるヘルマン・ヘッセさんの『車輪の下』を取ってもらえますか?」  たったそれだけを言うのにも、計り知れない位の勇気を必要とするんです。 (あーあ、今日も本を借りるのあきらめちゃおうかなあ……)  ため息混じりで、ブックエンドに伸ばしかけてた自分の手を下ろそうとした時でした。  右手の甲が、ブックエンドと本の間を引き抜いたのと同時に、隙間なく埋め尽くされたヨーロッパ文学全集の列を崩してしまい、まるでそれらがドミノ倒しみたいに連鎖反応を起こし、ドタドタドタッと雪崩を起こしながら、あたしの方に降り注いで来たんです!
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