プロローグ~選挙事前運動~

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「アンタ、名前は?」 「はっ、あっ、ひゃっ、その……」 「俺は、2年3組の池永隼人(イケナガ・ハヤト)  俺も名乗ったんだから、アンタも名乗りな」  何という強引さでしょうか? だけども、あたしはそんな彼……池永隼人君の気迫に押されてしまって 「は、はい。2年2組の矢田部真希(ヤタベ・マキ)です」  消え入りそうな声で、何とか言いました。 「マキちゃんね。これで、貸しが出来たな」  池永君はそう言うと、あたしのしゃがみこんだ姿勢と同じ高さまでかがみ込んで 【ドンッ!!】  と、開いた大きな右手の平を、後ろの棚、ケータイ小説文庫コーナーに突きました。  池永君と本棚、二つの壁に挟み撃ちになったあたしの小さな体は、言いようのない圧迫感に襲われています。  一層テンポが上がる、あたしの胸のメトロノーム。 「かかかかか、貸しって、なんのことですかぁ~?」  震える声で、必死にあたしはそうたずねます。 「何が良い? ってゆーか、それはオレが考えておくから」  もう訳が分かりません。こんなことになるのなら、本なんて図書室に借りに来るんじゃなかった……
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