張角挙兵と漢の衰退

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184年3月、そうして北平の黄巾軍の攻勢を耐え凌いだ盧植の元に、漢の監査官が訪れた。 城内の役所の中にいた盧植は急いで役所から出て、真昼の日の光で白く照らされた街道を早歩きで渡り、自ら城門まで行くと、そこで待っていた監査官・劉侑(ヨウ)と対面する。 「久しいな劉子高殿。こうして会うのは10年振りか。お元気でしたかな?」 盧植は第一に監査官の字を呼びつつ、会釈した。その表情はどこか明るかった。 「ああ。盧子幹殿こそよくぞご無事で」 灰色の髭を蓄えた劉侑も、第一に盧植の字である"子幹"を呼び、その小柄な体を少し曲げ盧植に会釈する。 二人には元々面識があり、盧植がまだ20歳の若さで洛陽に住んでいた頃に二人は知り合い、盧植が官宦に不遜な態度をとったとして崋北に追放されるまでの10年間、共に政治を語り合った仲だった。 会釈を終えると、盧植は城内に入り、劉侑もその後に続く形で入った。 城内に入ってすぐ、二人は広大な街道の側に建てられた役所の前で立ち止まる。 「屋内で話をするにはまだ肌寒いので、よく日の当たる所がちょうどいいでしょう」 そう言って盧植は役所の前に無造作に置かれた二つの椅子の片方に座り、劉侑に座るよう促す。 「うむ」 劉侑は盧植の気の利いた所に表情を和らげながら、椅子に腰かける。 「酒はいりますかな?役所の者に持ってこさせましょう」 「よいわ。酔えば監査官の務めを果たせないだろう?」 盧植が酒を杯に入れ飲むような仕草をし酒を勧めるのを劉侑は笑いながら断る。 「ところで北平総指揮よ、この度の北平での戦果、見事な物であった。もし北平を失っていれば、匈奴や鮮卑がこの戦いに割り込み、漢はさらに多くの敵と戦わねばならなかったであろう。間違いなくこの戦いの一番の功は貴公だ」 劉侑は一変して真剣な表情でそう言うと、席を立ち盧植に向かって頭を下げる。 「いや、漢の臣として当然の事をしたまでだ。国が直接派遣した監査官ともあろうお方が頭をお下げになられるな」 盧植はそう言って劉侑を断ったが、劉侑はそれでも頭を下げ続け感謝の意を表し、盧植はそれを真剣な表情で見守る。
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