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真夜中に御神木の根元と言えど、一晩一人。
普通の里の子だったなら、恐れと怯えに満ちただろう。
けれども“つのなし”普通でなかった、
(まんまるい月が黄色に光って、薄紅の桜がひらひら舞って、これを綺麗というのでは)
ぼんやりと鈍間な心に満ちたのは恐れよりも怯えより、見上げた空の美しさ。
そのうち花びら舞いちって、それが何かを示すよに並んで道になった時も、
(呼ばれているな、どうして呼ぶのか?)
わずかばかりの疑問だけ。
辿り進む、その歩みに躊躇の欠片も有りはしなかった。
失うものがない“つのなし”に、怖さも怯えも遠いものだったから。
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