“つのなし”が神様を嫁にした話。

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真夜中に御神木の根元と言えど、一晩一人。 普通の里の子だったなら、恐れと怯えに満ちただろう。 けれども“つのなし”普通でなかった、 (まんまるい月が黄色に光って、薄紅の桜がひらひら舞って、これを綺麗というのでは) ぼんやりと鈍間な心に満ちたのは恐れよりも怯えより、見上げた空の美しさ。  そのうち花びら舞いちって、それが何かを示すよに並んで道になった時も、 (呼ばれているな、どうして呼ぶのか?) わずかばかりの疑問だけ。 辿り進む、その歩みに躊躇の欠片も有りはしなかった。 失うものがない“つのなし”に、怖さも怯えも遠いものだったから。
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