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季節は巡り、千の満月。
長い定めを生きる鬼としてもかなりと言われる時を経て、それでも角の兆しすら全くとない鬼の子は、いつしか里で“つのなし”と呼ばれるでようになっていた。
里長の子でありながら、母の命と引き替えにこの世に生を受けながら、名も角すらも持たぬ出来損ない。
だからの“つのなし”。
里の民には冷たい目冷たい言葉と、不器用過ぎる父の厳しさと鍛練という難しい愛。
それらに育てられた“つのなし”は、心の痛みと淋しさから遠ざかる為に鈍麻な心を持つようになった。
笑い方も話し方も分からぬ“つのなし”は能面のような顔で殆んどを語らなかった。
人形のような彼を、更に里の民気味悪がるのだった。
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