過去の栞

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……。 冷たい風が吹くのを感じた。 窓が開いているのだろうかと目を開けると、自分は見覚えのある道を歩いていた。背中に重さを感じる、ランドセルだ。 「もう寒くなってきたね……。君の家ももうストーブ出したでしょ?」 栞が小さな手を擦りあわせながら、喋りかけてくる。 あぁ、自分はまた夢を見てるのか。また今朝と同じ夢を。 「どうしたの?」 栞が自分の肩を叩いてきた。自分は驚いて、肩を跳ねらせてしまう。肩を叩かれたのが予想外のことだった。 栞がこちらを見つめている。 「あ……、ストーブは出したよ」 「だよね。朝すごく冷えるもんね。ストーブにあたりながらじゃないと着替えられないもん」 栞はそう言って、照れくさそうに頬をかきながら前を向いた。 自分の頭は混乱していた。どうして栞は自分の肩を叩いたのだろう? 自分が今まで見た夢では栞はそんなことを一度もしなかった。それに自分がストーブを出した、と答えたことも一度もない。 それに、感覚が違うことに気がついた。今までは夢を夢だと理解して、小学生の自分と栞を、外から眺めている自分を感じていたのに、いま、その感覚はない。 今のこの感じは、まるで自分が本当に小学生の頃に戻ったような。
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