過去の栞

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そう頭の中で呟いたとき、身体の芯から幸福が広がっていった。今までの自分の苦悩がすべて無くなる! 「どこか痛いの…?」 栞の声が聞こえた。気づけば栞は心配そうに自分の顔をのぞきこんでいた。自分がしばらく黙っていたせいだろう。 「いや、痛くない。ごめん」 心配しなくても大丈夫と笑顔で示す。 しかし、栞はそれでも心配そうな顔を変えなかった。 「じゃあ、なんで泣いてるの?」 「え?」 自分は目元をさすった。指に涙がついた。自分は栞を救える喜びで、泣いてしまっていたのか。 「いや、これは……」と、なにか適当ないいわけを考える。まさか正直に理由は言えないだろう。色々と考えて、そのうちにいいわけではなく一つの案が浮かんだ。栞を救う案だ。 自分は「実は、お腹が痛いんだ」と言って、顔を少ししかめた。 そうすると、栞はくちびるをきゅっと結んで、なおさら心配そうな顔になった。罪悪感をチクリと感じる。しかしこれは栞のためなのだ。 「大丈夫? すごく痛いの? どうしよう……」 栞はあわてて周りをキョロキョロしだした。誰か助けを呼ぼうとしてるのだろうか。 「いや、そんなにじゃないよ。そこのベンチで少し休めば落ち着くと思う」 そう言って、自分は腹をさすりながら、木陰のベンチを指さした。
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