過去の栞

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ベンチの上の砂を払って、自分は座った。栞も同じようにして自分の右に座った。 栞は腹をさする自分をみて、「これで温めたらいいよ」と自分のポケットのなかのカイロをくれた。 「ありがとう」とカイロを受けとる。朝から使われていただろうカイロはまだ柔らかく熱をもっていた。自分はジャンバーのポケットにカイロを入れた。 栞は気をつかってか、それからは喋りかけてくることなく、前方をぼうと眺めて、たまに自分の具合をうかがうようにこちらを見てきた。 その間、自分はさっき思いついた案のことを考えていた。今日はたしか六時間目まで授業があったはずだから、今は四時過ぎあたりだろう。そして、事件が起こるのは六時前。 だから、六時前までの約二時間以上ここに栞を引き止めておけば栞は死なないはずだ、と。 「じっとしてると、やっぱり寒いね」 栞はそう言って、ポッケに入れたままの手をすりあわせた。
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