過去の栞

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ページをめくる。次はそれからほんの二日後の記事。 犯人が逮捕されたときの新聞記事だ。 犯人は自分たちの通っていた小学校のすぐ近くの溶接工場で働いていた三十四才の山口淳という男だった。顔写真をみると、カビのような無精髭に火で炙ったように固まった髪の汚ならしい男だった。 逮捕の決め手は、誘拐しやすいように怪我を負わせようと栞をはねた自家用車のバンパー部分についた傷とへこみ、そして車内に残った栞の微量の唾液、血液、髪の毛が見つかったことだった。 犯人は林道を通って車で自宅に帰る途中、一人で歩く栞を見つけ、そして衝動的に犯行をおこなったらしい。犯行供述では、「女子を車ではねたあとに車内に連れ込んだ。そこで暴行した。女子が暴れて腹を蹴ってきたからカッとなって殺した」 車のへこみをなぜ修理しなかったのかという問いには、「傷とへこみを直さなきゃヤバいと思って、とりあえず女子を側溝の脇の茂みに隠したあと、慌ててガソリンスタンドに行った。ガソリンスタンドでは修理に三万ぐらいするといわれた。金がなかった」と供述した。痕跡を消そうと車内を掃除したらしいが、やはり細かな痕跡は消えなかったのだろう。 恐らく、栞の身体は茂みから側溝まで転がったのだろうと思う。そして犯人が林道に戻る前に母親が栞の身体を見つけたのだろう。 その先のページには地元新聞の記事が数枚挟まっていて、あとは週刊誌の面白くもない記事に小学校関係者のインタビューの記事ぐらいのものしかない。
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