過去の栞

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すべての記事に目を通したが、変わっていることは何一つなかった。すべては自分が把握し尽くしているものだった。そのとき、自分が期待をしていることに気づく。なにを期待している? スクラップブックを引き出しの奥に押し込んだ。枕元の置時計を見るといまは昼の二時を過ぎたところだった。あと二時間後にはバイト先に着いていなくてはいけない。 正直、いまはバイトに行く気分じゃなかった。コンビニに流れるあの軽快な音楽なんか聞きたくもなかった。しかし休むことはできない。週四のシフトを一日でも空けてしまったら自分はまともな生活ができなくなるだろう。今の収入が生きるのに最低必要なのだから。 壁にもたれ座った。バイト先はここから近いから支度に急ぐ必要はなかった。煙を吐く。ぼんやりと、栞の夢を見たのは久しぶりだと考えた。 たしか最後に見たのは、この土地に来たばかりの頃だ。それから今まで見てこなかった。それなのに、なぜいまになって自分は栞の夢を見たのだろう。 しかも、最後の日のことをあそこまで精細に再現されたものを。 ひとつ、理由が頭に現れた。それは、罰。 栞の葬式に出なかった罰。逃げるように故郷から離れた罰。何かあの別れ道で行動を起こせば栞は?その罰。それから過ぎて、今の自分への罰。様々な、罰。 その罰の集大成がきょうの夢。
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