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城の奥深く、薄暗い地下の祭壇近くに、何人かの影が動く。
1人の足元には大きな魔法陣。ゆらりゆらりと動くのは、呪文が唱えられているからか…。
息を詰めた人々の気配が、ざわっと動く。
……と、魔法陣から光が迸る。
周りから驚きと喜びの声が溢れる。
辺りは光に包まれた。
思いの他、あっけなく輝きは薄れた。
その中には、1つの小さな影。
光がおさまった時には、周りの人はみな膝をつき、現れた影に敬意を示す。
「ようこそ、召喚に応じて頂きありがとうございます。
勇者様。」
正面にいた少女が声を出した。すると、
『ブヒッ。』
「へ?…ぶひ?」
不思議な音に恐る恐る顔を上げる。
…と…。
「「「ブタ?何でブタが!」」」
周りはもうパニックで、それにつられてブタも驚き、走り出した時には…。
ドボーン!!
「ああ!勇者の泉に入ってしまった!」
ピカ一!
泉は神々しい光を放ち、辺りを包む。
絶望に満ちた人々の姿を…容赦なく包み込む。
ほどなく泉からブタが出てきた。ぶるぶるっと、体を振るい水を落とす。
『ブヒッ。』
「「「やっぱりブタのままだー!」」」
絶望した!と、皆が腰から崩れ落ちた。
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