勇者現る!

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今、世界は魔族からの侵略で、未曽有の危機に瀕している。 数は少ないながら、魔力量の多い魔族に、人々は蹂躙されていた。 魔族には、王国の騎士達が武力で対抗しているが、1対多数でようやく退ける程度にしか抗えない。 王国中の魔法使いが、ありとあらゆる書物を読み取り、勇者召喚しか他に手がないと判断された。 そして、遂に勇者召喚が行われた…の…だが。 うやむやの内に、勇者様の歓迎パーティーが終わり、慌ただしく出立の準備が整えられた。 勇者様に首輪とリードを着けた王女に、召喚の儀式の時に居た騎士が、護衛に付き目立たぬ馬車で、国境迄やって来た。 「はぁ…、なんでこんな事になったのでしょう…。」 つい、騎士の口から言葉が溢れる。 これからの旅に合わせて、きらびやかな騎士鎧ではなく、簡単な胸当てと籠手背中には、旅の荷物を背負っている。 流石に腰には、慣れ親しんだ業物を下げているが…。 年の頃は20歳過ぎた頃か、少年騎士見習いから叩き上げで、馬持ちの正騎士に昇格した実力派だ。 明るい栗色の髪に、意志の強そうな緑の瞳を持った、いささか整った顔立ちの男だった。 「みんな…私が悪いのです…。私が何か間違っていたのです…。 ああ!もしかしたら、魔法陣に入る時に右足から入ったのが、いけなかったのかしら! それとも、詠唱の前に咳払いしたのが悪かったのかしら!」 隣りにいた王女が顔を附せて泣き出してしまった。
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