芋虫男と小学生

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「今日も上手くいきませんでした」 島田由美子から積極的に声をかけていこうときたが、生徒達は島田由美子が近寄ると今までやっていたことを打ち切って散らばってしまい、無理に近寄ると空気が凍りついたような息苦しさに喉が詰まる。まるで、狼と子羊みたいだった。狼の島田由美子は決して仲間に入れてはもらえない。 「…………はぁ」 とため息をついた。上手く行かないときにはとことん上手く行かないものだ。とぼとぼと通学路を歩いていると、目の前に芋虫が転がっていた。それも巨大な芋虫だった。 道に塞ぐ芋虫……らしきものはよく見てみると寝袋だった。ボロボロに薄汚れているせいでわかりにくかったのだが、島田由美子はそのことに気がつかない。 「芋虫」 と言ってしまった。その声に呼応するようにゴロリと転がり、 「誰がゴキブリじゃ、ボケ、殺すぞ」 と顔の部分から顔を出したオッサンが開口一番にそんなことを言った。 「怪人芋虫男、や、やはり、この世界はそういう世界でしたか」 妄想力、逞しい彼女は寝袋男の言葉は届いていない。 「聞けよ。このくそガキ、ちょっと、話ば聞け」 「はっ、組織Xの影はそこまで、貴方はその組織の使者なんですね」 「あー、ソックスでもセックスでもなんでもいい、ちょっと嬢ちゃん、この寝袋とってくれんか?」 「芋虫なのに?」 「誰が芋虫じゃ、おっちゃんなこれを着たら脱げなくなったんだよ。おそらくチャックが壊れたんやろうな」 「コスプレですか。設計ミスですね」 「なんでじゃ、おっちゃんがコスプレしてるところ想像してみ? 想像したか? で、どう思った?」 「死にたくなりますね。吐き気がします」 「なんでじゃ、そこはおっちゃんカッコイいとか言うてよ。吐き気だなんておっちゃんショック」 「すみません、確かにダンディーなおじ様ですね。寝袋してなければですけど、漫画のキャラクターとしては斬新かもしれませんね」 「お世辞なんかいらんよ。けど、嬢ちゃんなんか他人行儀な喋り方なん?」 「え?」 「なんかなーですます口調は礼儀正しいかもしれんけどな、子供がそれすると小生意気にしかならんよ。子供ならもっと自由にしろや、タメ口、タメ口」 「ですけど、こういった喋り方しかできませんし」 「アホか、できないって諦めるからダメなんよ。なんでもやってみんかい。おっちゃんみたいに枯れとらんやろ」
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