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もぞもぞと動きながら芋虫男は言った。自身のことを枯れていると言いながら、
「おっちゃんこう思うんよ。親のいうことばっかり聞いてたらいかんってな、危ないことも嫌なことも実際にやってみなければわからんってな、嬢ちゃんもそう思わん?」
「よく、わかんない……よ」
と島田由美子はモゴモゴと口を動かした。ですます口調をやめようとしているのか微妙にぎこちない島田由美子に芋虫男は少しだけ口元をゆるめ。
「そかそか、まだわからんか、まぁ、いいけどな、おっちゃんの説教なんてうっとうしいだけだしな」
「う、ん、そんなことない……よ。ね、おじ様」
「なんでい
「友達ってどうやったらできるのかな?」
と口が開いたが、芋虫男は身体をもぞもぞさせて、
「知らん」
「えぇ、そっけない」
「知らんよ。おっちゃんやぞ。おっちゃんこそ聞きたいわ、嫌みな上司にばれずに嫌がらせするか、こっそり靴の中に芋虫放り込みたいわ」
その言葉に島田由美子は微妙に頬をひきつらせた。
「陰険だよ。イジメはよくないし」
「友達なんぞ、そりゃ遊ぼー言えばいいんと違うん?」
「そうしたら、どれだけいいかなって思うんだけどね。私が近寄るとみんな離れていくの」
「あー、わかるわ、おっちゃんもな、会社で可愛い女の子に近寄ると苦虫、噛み潰した顔してな、おっちゃんの座ったところファブリーズかけとったよ。死にたくなったわ。別に下心なんてないっちゅーねん」
「…………」
「笑ってもいいよ?」
むしろ、笑えと芋虫男は言ってくるが島田由美子は苦笑いで返して、
「もしかして、おじ様、友達いないの?」
「何言ってんの? おっちゃん友達とかいっぱいじゃ、おっちゃんが携帯で集まれと言えば、わらーっと集まるんじゃぞ。嬢ちゃんは知らんやろうけどな、昔はすごかったんだからね。本当だからね、おっちゃんも昔はブイブイ言わせててな、こう切れ味抜群のナイフと呼ばれ取ったんよ」
「じゃあ、その友達に出してもらえばいいんじゃないの?」
「嬢ちゃん、そこ言う? 言うてしまう? よーく考えてみてな、おっちゃん寝袋に入っとる、おっちゃんの両手は動かせない電話も取り出せんかのにどうやって助けを呼べばいいん?」
「そこは、気合い?」
「気合いではどうにもならんよ。嬢ちゃんだって気合いで友達できると思うか?」
「無理」
ときょとんと小首をかしげながら答えた。
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